研究概要 |
プロバイオティクスとして生体への免疫調節効果が期待されるBifidobacterium pseudocatenulatum 7041菌体には,その菌体成分にペプチドグリカンや高分子水溶性多糖を含んでいるが,経口摂取した際に免疫系に与える影響についてはその作用機序が十分に明らかになっていない.本研究では,この菌体多糖が誘導する免疫調節作用について分子細胞生物学的な見地から解明するために,菌体多糖をマウスに経口投与した際のこの菌体の生体内局在性を経時的に調べ,この菌体多糖がどのように免疫系細胞へ作用しているのかを解析した.Bifidobacterium菌体をあらかじめCFSEで蛍光標識してマウスに経口投与し,経時的にバイエル板(PP),腸間膜リンパ節(MLN),粘膜固有層(LP),盲腸リンパ小節(CF)の各腸管免疫系組織を採取し,その凍結切片を共焦点顕微鏡で観察した.その結果,経口投与1時間後のPP, LP,4時間後のCF,および18時間後のMLNにこの菌体の存在が観察され,CD11c陽性細胞(樹状細胞など)の分布する位置と一致した.よって,経口投与したこの菌体はまずPPにおいて取り込まれ,循環帰巣経路を経てMLNに到達すること,さらに腸管上皮細胞間のタイトジャンクションや絨毛M細胞などから菌体多糖がLPに取り込まれること,盲腸リンパ小節にも菌体多糖が取り込まれることなど,腸管免疫系組織に直接作用していることが示唆された.また,1週間の菌体多糖の経口投与によって,バイエル板においては自然免疫系のCD11c陽性細胞を介して獲得免疫系のT細胞応答を感作してCD4陽性細胞に対し感作型のフェノタイプ(CD62L^<low>)の発現を誘導するとともに,感染防御において重要なIgA産生を誘導するサイトカイン応答を活性化することが明らかとなった.
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