研究概要 |
九州南部における竹林拡大の様相と要因を明らかにし,竹林拡大防止の方策に関する知見を得るために,2004年度から2006年度にかけて竹林の動態を調べた。調査は宮崎県中部から北部の12の区域を対象として行った。調査期間は1970年代から2000年代にわたる約30年間で,調査は約10年間隔で4時点について実施した。調査と分析は,オルソ幾何補正を行った各時点の空中写真画像,地理情報システム関連ソフトウエア(ArcGIS, Spatial Analyst, Image Analysis for GIS)などを用いて行った。観察されたタケの種類は,モウソウチク,マダケ,ハチク及びメダケであり,モウソウチクが最も多かった。主に,宅地や田畑周辺に分布しており,分布域に顕著な経年変化はみられなかった。各地区の総竹林面積は約30年間で1.2〜9.1倍となっており,地区による違いはあるが,各地区で竹林拡大が認められた。ただし,3地区を除き,3倍以下であり,拡大の程度は高くなかった。一方,総竹林数については0.6〜4.1倍で,1.4倍以下が83%,1.0倍以下が50%であり,竹林数は総面積ほど増加しているとはいえないことや近年ほど個々の竹林面積が増加していることから,竹林拡大は個々の竹林面積の拡大によると推測された。各期間中の個々の竹林の変化にはさまざまなタイプのものが観察された。多かったのは,新規出現,単純拡大,結合,消失などであり,それらがさらに細分されたタイプのものも観察されるなど,個々の竹林の変化の様相は複雑であり,新規出現により総竹林数が単純に増加しない一つの理由と考えられた。竹林分布や竹林拡大と環境要因の関係については,標高,傾斜角,傾斜方向などの立地環境要因との関係や林相との関係が一部うかがわれたが,全体としては明らかな傾向は認められなかった。
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