研究概要 |
ERF/AP2ドメインタンパク質は,高等植物に特有の転写制御因子である。ERF/AP2ドメイン転写制御因子は,花の形態形成,植物ホルモンであるエチレンに対する応答あるいは乾燥・高塩濃度や低温等の環境ストレスに対する応答等に関与することが知られている。ERF/AP2ドメインタンパク質のうち,DREBサブファミリーに属する転写因子は,植物の環境ストレス応答に関与する。本研究では,高環境耐性樹木の開発を目指し,シロイヌナズナのDREB1A遺伝子をカリフラワーモザイクウィルス由来の35Sプロモーターの下流につないだコンストラクトを作製し,ポプラ(セイヨウハコヤナギ:Populus nigra L.var.italica Koehne)にアグロバクテリウム法を用いて導入した。これまでに作製した約40ラインのDREB1A導入形質転換ポプラを解析した結果,シロイヌナズナのDREB1A過剰発現形質転換体で観察されるような表現型(成長異常や環境ストレス耐性)は見られなかった。今後,ポプラ形質転換体のライン数を増やすとともに,ストレス耐性試験法を再検討する必要がある。一方,草本植物であるシロイヌナズナのDREB1A転写因子が,木本植物のポプラで正常に機能しない可能性が考えられる。このため本研究では,ポプラ完全長cDNAライブラリーのEST解析から,ERF/AP2転写因子ファミリーに属する遺伝子を単離して解析を行った。その結果,ERF/AP2転写因子ファミリーに属する遺伝子が25個見つかり,それらのうちDREB転写制御因子サブファミリーに属する遺伝子が11個同定された。それらの遺伝子はストレス誘導性を示した。今後,ポプラ由来のDREB転写因子をポプラで過剰発現させることにより,効果的な高環境耐性形質転換樹木の作出が期待される。
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