研究課題
基盤研究(C)
魚類の場合にも、家畜と同様に、精子を凍結保存することは可能である。ところが、卵の大きさが非常に大きいために、未受精卵、あるいは初期胚の凍結保存技術がまったく確立していない。したがって、ミトコンドリアDNAをはじめとする母系の遺伝子の保存技術は、魚類ではまったく確立されていないのが現状である。そこで本研究では、将来、卵と精子の両者に分化可能な始原生殖細胞を凍結保存しておけば、卵と精子の両者を凍結保存することと同じ意味があるだろうと考え、その凍結保存技術を開発した。16年度は始原生殖細胞を凍結する際の凍結保護剤の選択、およびその至適濃度の探索を行った。具体的にはジメチルサルフオキシド、プロパンジオール、グリセロールおよびエチレングリコールの4種の凍結保護活性を用いて始原生殖細胞の緩慢凍結を行い、24時間後に急速解凍し、得られた細胞の生残率を求めた。その結果、エチレングリコールが最も高い生残率を示し、その至適濃度は1.8Mであった。さらに、解凍後の始原生殖細胞を孵化稚魚の腹腔内に移植するとこれらドナー細胞は宿主生殖腺に自発的に移動し、そこに取り込まれ、増殖、分化する事を確認した。17年度は凍結細胞を移植した個体を飼育し、成熟させた結果、雌雄両宿主個体から、凍結始原生殖細胞に由来する卵および精子を得ることができた。さらに、これらの配偶子をそれぞれ通常の個体から得られた配偶子と受精させたところ、全く正常な次世代個体を得ることに成功した。続いて、完全に凍結した細胞から個体を作出するため、凍結始原生殖細胞に由来する卵に凍結精子を媒精した結果、正常な個体を得ることができた。これは完全に凍結した細胞から生きた魚類個体を作出した世界で最初に報告例である。
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