研究概要 |
両性生殖の発現に対する親ワムシの加齢の影響:若い母虫ほど両性生殖個体を多く産出した。また、加齢の進んだ母虫から生じたワムシが、次世代にmictic femaleをより多く産出することも明らかになった。このとき母虫の加齢は次世代の寿命や産仔数に影響を与えなかった。 耐久卵孵化ワムシの孵化時の環境が両性生殖の発現に与える影響:耐久卵孵化ワムシをふ化後12時間程度。飢餓させたり、パン酵母を与えた後、Nannochloropsisに餌を切り換えることによって、両性生殖が活発なワムシ株を育成できた。 両性生殖発現の遺伝子レベルでの作用機構解明:無菌のワムシ培養液より、単性生殖雌ワムシ、両性生殖雌ワムシ(2種:耐久卵を携卵、雄卵を携卵)および雄ワムシを、個別に収穫し各タイプのワムシよりtotal RNAを精製した。これらのtotal RNAを用いて各個体のcDNAを合成し、DD-PCR法による各個体特異的発現遺伝子のクローニングを試みた結果、各個体に特異的に発現している遺伝子断片が得られた。両性生殖能を有する雌ワムシ(2種)のみに特異的に発現している6本の遺伝子断片は、両性生殖誘導に関連する機能を有している可能性が高い。 ワムシ適株の育種:東京株とドイツ株の交雑によって得た6株は,親株と比較すると,いずれも両性生殖誘導率,受精率とも低くなった。一方,個体群増殖率は親株の0.31に対し,交雑株は0.35〜0.37と高くなった。交雑株は受精卵を形成せず,中には雄の出現すらない交雑株もあった。また、15℃で採集した耐久卵を、休眠させずにふ化させて得た個体群を20℃で培養すれば、休眠卵形成を著しく昂進できることが分かった。 ワムシの休眠卵量産実験 前年度の基礎研究で得た耐久卵形成能の高いワムシ株を用いた量産試験を1トン水槽4面を用いて実施し、従来の4〜5倍の効率で計4億個を量産した。
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