研究概要 |
東北アジアの,とりわけ日本,韓国に共通しているのは,第二次世界大戦後に農地改革を実施し,広範な自作農を前提とする家族経営を前提に出発したことである。本研究は、日本(庄内地方)と韓国(忠清南道)におけるムラでの農地改革後の土地と人の動きを検討したものである。また具体的な農地改革はいかなるものかを戦後自作農、イエ、ムラとの関係を検討したものである。以下、明らかになった点は次のごとくである。 1.日本(庄内地方)は農地改革により、旧地主および小作大経営層に有利に農地改革が行われた。旧小作経営にも農地を開放するかわりに、旧地主および小作大経営そうは比較的結うとうちをみずからの経営地にした。但し、優等地・劣等地の基準は収量水準ばかりではなく、自宅からの距離、農地の集団化、排水条件も勘案した意味での序列であり、比較的自宅から遠い結うとうちをを開放して、近い劣等地を集めて集団化している場合もある。 2.韓国(忠清南道)は、土地、労働、資本の本源的生産要素の市場かの限界が、チプとマウルにあり、そのことが農業・農村・家族のセーフティネットになっていることを明らかにした。従来の韓国の小農的なモラルエコノミーも構造変動を示しており、圧倒的多数の貸し付け高齢農家と点滴存在の規模拡大農家という二極分解型の農家構成になっている。貸し付け高齢農家はほぼ70歳を境に農業からリタイアし、点滴規模拡大農家は中高年層の一部でしかない。このことから、経営耕地規模別農家模式図と世帯主年齢農家構成模式図が一致することを明らかにした。またこの小農的モラルエコノミーが再生産される可能性はきわめて薄いことを明らかにした。
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