研究概要 |
1,肉用牛産地の質的展開や産地間競争について精液確保・供給体制の整備・変革との関わりの視点から、(1)各産地を整理・類型化するとともに産地の質的展開をみる。(2)地域産地や生産者組織、個別経営の対応、産地戦略。(3)精液確保・供給形態別に見た産地展開と再編方策のあり方等について考察した。 2,研究実績の全体構成は、Iはじめに。II産地の新展開(統計的分析)。III肉用牛産地の対応(宮崎・長崎、島根、岩手、北海道の5道県の実態分析)。IV地域産地の展開(宮崎7地域、壱岐市、十勝地方、兵庫県美方地域)。V肉用牛生産とシステム的対応(壱岐市、高山市、島根県奥出雲町)。VII個別経営の動向。VIIIむすび。からなる。 3,得られた新知見は、(1)これまで必ずしも明らかでなかった全国的・産地別の精液確保・供給体制が明確になり、自給型、「事業団」依存型、併用型と各産地の産地展開が明確になった。(2)近年の子牛価格の動向を見ると、従来の西高東低型から東高西低型へ大きく変化しているが、その背景には「事業団」依存型ないし併用型産地の躍進がある。(3)その典型が北海道で、広域流通型精液(事業団、民間)と優良雌牛の大量導入という、遺伝資源の乏しい産地でも優良子牛生産を可能にしている。また、ET生産も大きな力となっている。(4)精液流通の広域化により、各産地とも資質に恵まれた特定の優良種雄牛血統(含めす牛)に集中・特化する傾向がみられる。(5)また、「自給ないし併用」型産地の種雄牛は全国流通型の血統・系統への平準化の傾向が見られる。(6)全国流通型精液が広範にみられる反面、道県有牛保有意識は依然として強い。(7)各産地は改良情報の習得、改良速度のアップ等から地域一貫の方向を強め、最終商品牛肉を巡る産地間競争(ブランド化戦略)を強めている。(8)以上のような動きは、自由化が一段落した98〜2000年前後を境に顕著にみられる。
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