研究概要 |
空間的に不均一な植生に対する放牧家畜の採餌戦略について,暖地型イネ科草地を採食する牛をモデルとし,主としてパッチスケールでの採餌に焦点を当てて調査.解析し,採餌戦略のメカニズムの一端を明らかにしようとした。 1.パッチ選択の様相 草地内に再成長期間あるいは再成長期間と施肥量の異なる2〜9のパッチを人為的に創出し,放牧牛によるパッチ選択について調査した。この結果,放牧牛は,パッチへの訪問とパッチでの滞在の2段階の選択過程を通して,多種類のパッチ条件下でも好みのパッチを選択する能力を備えていることが明らかになった。 2.バイトスケールの摂取行動 暖地型イネ科草2草種を採食する牛について,パッチ選択の報酬の1つとされている乾物摂取速度とそれを構成する諸要素(バイト面積,バイト深,バイト重,バイト速度)の草量や草高に対する反応を調査し,乾物摂取速度を任意の草量や草高から推定できる予測式を開発した。 3.パッチスケールでの採餌戦略(パッチ選択)のメカニズムのモデル化と質的報酬の解明 パッチスケールでの採餌戦略(パッチ選択)のメカニズムをモデル化した。作成されたモデルは放牧牛によるパッチスケールでの採餌戦略を予測することができた。また,パッチ選択の質的報酬は粗タンパク質含量であるとみなされた。 4.採餌戦略の個体差 採食地点に対する選択性には個体差が存在することが認められた。採餌戦略の個体差を明らかにし,これを取り込むことによって,群としての採餌戦略とそのモデルに発展させることが望まれる。
|