研究概要 |
【目的】 宮崎市で多年利用可能なネピアグラス(Pennisetum purpureum)の矮性晩生品種(Dwarf-late;以下DL)草地に,晩秋にイタリアンライグラス(以下IR)を追播し,造成後2〜4ヵ年における黒毛和種肉用育成牛の輪換放牧体系の牧養力,増体性,草量および放牧前後のDLとIRの飼料品質を測定し,本体系の持続性を検討した。併せてDLの効率的増殖方法も検討した。 【材料と方法】 2002年5月6日に,DLの放牧草地4区(5a(20m×25m)/区)を,発根分げつ苗の栄養繁殖により,2株/m^2(畦間1m,株間50cm)の栽植密度で造成し,2004年5月5日に同様の区面積と密度で2区増設した。DL草地は,2002年では3頭の繁殖成牛(放牧開始時は451kg/頭)により,2003年では2〜3頭の育成牛(同359kg頭)により輪換放牧し,2004年および2005年では3頭の育成牛(同276kg/頭)により,6月下旬〜10月下旬に4周期放牧したが,放牧期間中に補助飼料は給与しなかった。放牧牛の生体重を11:00に測定し,放牧前後の草量を測定した。2003,2004年11月上旬のDL草地退牧時にIRを追播し,翌春の3月上旬〜4,5月下旬の放牧前後に,地表面5cm以上のIRと2004年の放牧前に地表面10cm以上のDLについて,葉身および(葉鞘を含む)茎のin vitro乾物消化率(IVDMD)と粗タンパク質(CP)含量を測定した。 【結果と考察】 1)5aのDL草地を6区造成すると,肉用繁殖育成牛3頭を輪換により6月下旬〜10月下旬の約4ヶ月間放牧利用でき,この全期間の日増体量は,2004年,2005年ではそれぞれ0.43kg/日,0.56kg/日であった。 2)牧養力は,夏期のDL草地で両年とも約1000CD/haであり,放牧前後の草量は平均360g/m^2,210g/m^2であった。 3)放牧牛の退牧時血液性状には特段の問題点はなかった。 4)2004年のDL草地における放牧前のIVDMDとCP含量は,年間平均で64.1%と8.1%であり,IVDMDは暖地型イネ科牧草の平均値(約54%)に比べ高くなった。CP含量はいずれの周期も葉身より茎で低くなった。 5)IRの2004年,2005年における放牧前後のIVDMDは,年間平均で80.5%,73.8%,CP含量各々11.9%,8.9%であった。 6)沖縄県で越冬したDL苗圃から刈株の穂茎を採取する方法により,苗の効率的増殖が行えると考えられた。 したがって,本研究の結果から,DL草地に晩秋にIRを追播することで,暖地型牧草の平均より優れた粗飼料を長期間供給でき,放牧家畜の増体性も高く,沖縄県における苗の増殖を介し,省力的・環境保全的な飼養体系が確立されると実証された。
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