研究概要 |
この研究は、様々な内因性血管活性物質の脳血管への反応性を魚類から哺乳類に至る動物で検討するものであり、爬虫類であるヘビの脳血管反応、哺乳類であるブタの静止張力維持機構およびウマのブラジキニン反応を検討し下記の結果を得た。 1.5-HTは、クサリヘビ科のハブの脳血管を収縮させ、それには5-HT_2は関与せず、5-HT_1のみ介していることが示唆された(第142回日本獣医学会(山口)にて発表)。 2.鳥類のブロイラーでも同様に、5-HTの脳血管反応性を調べた。その結果、ハブと同様に5-HT_2は関与せず、5-HT_1のみ介していることが示唆された。 3.両生類のウシガエルでも脳血管反応性を検討した。ノルアドレナリンでは弱い収縮を示したが、α作動薬であるフェニレフリンではより大きな収縮を、β作動薬であるイソピロテレノールでは大きな弛緩反応を示した。このことより、ウシガエル脳血管には、α受容体もβ受容体も存在しそれぞれ収縮および弛緩に機能していることが示唆された。アセチルコリンは脳血管を用量依存性に収縮させた。 4.哺乳類のウマのブラジキニン反応を検討した。ブラジキニンは一般に血管弛緩物質としてしられるが、ウマでは5-HTやヒスタミン、ノルアドレナリンより大きな収縮反応を示した。この反応はB_1およびB_2拮抗薬でも抑制されず、ウマにおけるブラジキニンの新たな生理的役割がある可能性が示唆された(第142回日本獣医学会(山口)にて発表)。 5.哺乳類のブタで脳血管反応性を検討した。静止張力は、内皮細胞から遊離するNOと主に平滑筋から遊離するTXA_2でバランスが保たれている。今回、培養内皮細胞を使ってNOおよびCOXを阻害した場合のTXA_2およびNOの産生量を検討した。その結果、COX阻害によりNO産生量は増加し、NO合成阻害によりTXA_2産生は検出限界以下から有意に増加した(Vascular Pharmacol.,46,85-90,2007)。 ヘビに関する実験は、ヘビ特有のBK([Val^1,Thr^6]-BK)で追加実験を行い、内皮依存性の弛緩反応を得た(Comp.Biochem.Physiol.,2007,in press)。今後、順次コイおよびウシガエルの脳血管反応、トリの脳血管反応、ウマのブラジキニン反応について論文発表を行う予定である。
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