研究概要 |
Lactococcus garvieaeに起因するブリのレンサ球菌症は,養殖ブリの重要疾病のひとつである。多くの病原細菌が腸管の糖脂質に結合することにより感染の足場を作り,深部臓器に侵入すること,また本疾病において,起因菌が罹患魚の脳組織に高率に検出されることを踏まえ,腸管および脳におけるL.garvieaの結合分子を明らかにすることを目的として実験を行った。ブリ腸管ならびに脳の糖脂質を解析し,これら糖脂質に対するL.garvieaの結合性を調べた。また,腸管におけるL.garviea結合分子の局在と,その部位への菌の結合性を調べた。薄層クロマトグラフィー(TLC)により,腸管では中性糖脂質7種,酸性糖脂質4種,脳では中性糖脂質,酸性糖脂質ともに3種の糖脂質が検出された。また,ウサギ抗L.garviea抗体を用いたTLC免疫染色により,腸管・脳の両者ともに,酸性糖脂質であるGM3と同一の移動度の位置にL.garvieaの結合を認めた。蛍光色素で染色した菌を腸管凍結組織切片に反応させると,粘膜上皮に強い結合が観察された。グリコシダーゼ処理により,この結合は濃度依存的に抑制された。続いて,ホルマリン不活化L.garviea菌体を種々の組成のリポソームに再構成して,リポソーム封入抗原の酸(胃液),消化管ならびに膵臓の消化酵素,および胆汁に対する安定性を検討した。その結果をもとに,ブリへの経口投与に最も適したリポソームを選択した。さらに,リポソーム封入抗原の経口免疫による,ブリにおける感染防御の誘導を試みた。リポソーム封入超音波処理L.garvieaを飼料に混合投与してブリに経口免疫した。免疫したブリ,ならびに対象として抗原のみを経口投与したブリに対する攻撃試験を,強毒菌を用いて行った。実験結果から,免疫誘導に必要なL.garviea抗原量,免疫回数と防御との関連を検討した。これらの予備試験の結果に基づき,現在本試験の実施準備を行っている。
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