研究課題
基盤研究(C)
機能性オキシド化合物の設計とその触媒反応への応用を目的とし、各種オキシド配位子を設計・合成してその不斉触媒反応への応用を検討して以下の成果を得た。1、最も一般的な光学活性リン配位子であるBINAPから1行程で合成できるキラルホスフィンオキシドBINAPOがアリルトリクロロシランによるアルデヒドの不斉アリル化反応およびトリクロロシリルエノールエーテルによるアルデヒドの不斉アルドール反応の触媒として有用であることを見出した。アリルシランやトリクロロシリルエノールエーテルの幾何異性比(E/Z)は生成物のジアステレオ比(anti/syn)に厳密に転写されることから、これらの反応が高配位シリカートを含む6員環いす型遷移状態を経由して進行することが強く示唆される。2、BINAPOが四塩化ケイ素によるmeso-エポキシドの不斉開環反応の触媒として有用であることを見出した。上記の三つの反応は、キラルなホスフィンオキシドを触媒とするものとしては、いずれも初めての例であり、ホスフィンオキシドの触媒としての有用性が実証された。3、光学活性なリチウムビナフトラートが、トリアルコキシシリルエノールエーテルとアルデヒドの不斉アルドール反応の触媒として有用であることを見出した。本反応のジアステレオおよびエナンチオ選択性は、反応系内の水の有無に大きく左右された。シクロヘキサノンから誘導されるトリアルコキシシリルエノールエーテルとベンズアルデヒドの反応では、無水条件下ではanti体が優先して生成しそのエナンチオ選択性は中程度であるものの、シリルエノールエーテルと当量以上の水を存在させると、優先して生成するsyn付加体のエナンチオ選択性は90%を越えた。これらの結果は、有機合成化学におけるオキシド関連化合物の触媒としての新たな可能性を拓くものである。
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