研究概要 |
我々はCSI-MSやNMR法を用いて水素結合を中心とする弱い分子間力で結合する化合物の溶液動態構造解析を研究している。種々のステロイド化合物を用いてNMRにおいて溶液中の自己拡散係数(D)1次元測定とCSI-MSにより、溶液中でNarcissistic(自己会合)の解析をした。単結晶X線構造解析(固体状態)とCSI-MS(弱い相互作用を観測できる)の結果から(1)強い水素結合をもつグループ(2)弱い水素結合をもつグループ(3)水素結合無しの3つにグループ分けできた。しかし、D測定からは、水素結合の数が多いほどDの値が小さくなると言う予想に反し、水酸基の数にかかわらずある種の規則性に従って水素結合をするものと、しないものとで二極化するという非常に興味深い結果が得られた。次に、異なる分子間での相互作用について、コール酸の包接・タンパク質一薬物間の相互作用の観測および^<19>F NMRによるタンペク質-薬物間の相互作用の観測においても、Dでの評価の可能性について検討し好結果を得た。さらに、2次元拡散測定(DOSY)法で異性体の混合試料や、分子量の類似する混合物も、Dの差によってスペクトル分離ができた。また、ビスグアニジノベンゼンー安息香酸(1:1,1:2,1:3,1:4の複合体)のDは、安息香酸の比率が大きくなるほどDは小さくなる(分子体積が増加する)ことが判明した。CSI-MSを測定したところ、混合比から見積もられる分子量に相当するピークが観察された。今後は、本複合体を用いて異種核間相互作用の観測に立体的な構造解析法の一手法として、最近その有効性が注目されている固体NMR測定に取り組む予定である。ここで確立したD測定法をイオン液体[bmim]Brに適用し、非常に興味ある結果を得ることができた。
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