研究概要 |
ヒトがん細胞に強力な選択毒性を示すアセトゲニン類の基本骨格合成法の確立と高活性物質の探索を目的に研究を遂行し,その結果,mono-およびbis-THFアセトゲニンの代表例としてmurisolinとlongimicin Dの初めての不斉全合成研究を達成するとともに,独自に開発したpoly-THF環部の系統的合成法の利点を生かしてmurisolin類縁体を合成し,その生物活性評価を行った. 1)Murisolin及び類縁体の合成と活性評価 既に確立したpoly-THF環部の系統的合成法とともに,アセトゲニン合成に必要な工程であるγ-ラクトン部との連結部導入法を確立することにより,mono-THFアセトゲニン,murisolinの初めての不斉全合成に成功した.また,2種類の16,19-cis-murisolinを合成し,先に合成したmurisolinとともに,ヒトがん細胞パネル評価とCOMPARE分析を依頼し,39種のヒトがん細胞に対してフィンガープリントの収集,並びに,類縁体間や既存薬とのCOMPARE分析により作用機作の比較を行った. 2)Longimicin Dの合成 膵がん細胞に対して強い細胞毒性を示すlongimicin Dの不斉全合成を行った.不斉点の集中するbis-THF環部を系統的合成法により,高い光学純度で合成することができた. THF環部とγ-ラクトン環の連結部として適するものを検討した結果,(3R)-10-benzyloxy-3-(methoxymethoxy)dec-1-yneが最適であることを明らかにし,不斉アルキニル化とアルキル化によって3つのセグメントを連結することで,longimicin Dの初めての不斉全合成に成功した.
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