研究概要 |
1.ジフルオロアルケン化合物と銅(I)試薬との反応により、フッ素の脱離とともにSN2'型アルキル化が進行して、高立体選択的にフルオロオレフィンが生成する事をすでに見出しており、この反応のペプチドイソスター合成への応用と、新たなフルオロアルケンの合成反応を検討した。 (1)HIV-プロテアーゼ阻害剤としても注目されているペプスタチンの部分構造Sta-Alaの、Z-フルオロオレフィンイソスターの合成を検討し、γ,γ-ジフルオロ-α,β-エノエート誘導体のGilman試薬による還元的脱フッ素化、続くハロゲン化アルキルによる2位アルキル化によりジアステレオ混合物ながら目的物を得た。 (2)抗腫瘍作用を有するジペプチド構造のベスタチンの含フッ素アナログ合成を検討した。D-フェニルアラニンから得られた鍵中間体に同様の反応を適用し、目的物を合成したが、収率と立体選択性の点では必ずしも満足のいく結果ではなかった。 (3)3位に水酸基を有する光学活性な4,4-ジフルオロホモアリルアルコール誘導体の脱フッ素アリル置換反応により合成した鍵中間体は、完全な不斉転写を伴ったOverman転位反応により、光学活性な含フッ素ジペプチドイソスターへ変換できた。一方、同じ中間体からone-potで水酸基のメシル化-アジド化を行うと、立体反転を伴ってアミノ基が導入されることから、両反応は相補的な関係であり、2,5-syn体と2,5-anti体の作り分けが可能となった。 2.γ,γ-ジアルコキシアリルジルコニウム種は分子内に複数の反応点を有しており、グリオキシレートや銅塩存在下のイミンとの反応で、それぞれβ位,γ位で反応することを見出した。イミンとの反応生成物を脱保護することによりα,β-不飽和カルボニル基を有するアミン誘導体が高収率で得られることも明らかとなり、アミノ酸誘導体を含む生理活性化合物の合成に応用可能と考えられた。
|