研究概要 |
平成16〜18年度にわたり科学研究費基盤研究(C)(2)の助成金をもとにして、前周期遷移金属錯体である有機ジルコノセン錯体を用いる新規反応の開発を目的として研究を行った。求核活性が低いか、あるいはほとんど無い有機ジルコノセン錯体が、遷移金属触媒存在下で特色ある求核性を示すことは当研究者により既に明らかにされているが、それらの展開としてアミド不斉補助基を有するα,β-不飽和化合物へのジアステレオ選択的、1,4-付加反応が選択的かつ高収率で進行することを明らかにした。これらの反応結果を基にロジウム触媒存在下、アルケニルジルコノセン錯体の連続的1,4-付加つづくアルドール反応により、立体選択的炭素環状化合物の光学活性体の構築に成功した。また、アシルアニオン供与体としてのアシルジルコノセン錯体の更なる炭素-炭素結合形成反応への展開として、ω-不飽和α,β-不飽和ケトン化合物との反応ではパラジウム錯体を触媒としてビシクロ[3.3.0]化合物が効率よく立体選択的に得られることを見出していたが、カルボニル基が存在しないα,ω-不飽和化合物との反応ではニッケル錯体を触媒として用いることによりビシクロ[3.1.0]化合物の生成を確認した。これらは、いずれも求核性の乏しい有機ジルコノセン錯体の炭素-炭素結合形成反応への利用であり、今後の有機合成への基礎的反応になるものと考えられる。 一方、低原子価ジルコノセン錯体としてのジルコノセン等価体を用いる研究としては、当研究者は既に、ジルコニウム金属と酸素の親和性に基づく脱離反応を基盤としたo-アルコキシメチルスチレン体からのo-ジルコノセニルメチルスチレン体の生成を明らかにしている。この結果を基に、銅触媒によるアリル化つづくオレフィンメタセシス反応により、エストロゲンの合成中間体の合成を明らかにしている。
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