研究概要 |
エジプト伝統薬物(ファラオ天然薬物)から糖尿病や肥満症予防に有効と判断される伝承薬物および薬用食物を入手し,各種スクリーニング試験を経て肥満あるいは糖尿病予防効果に有望な素材を探索した.その結果,エジプトやトルコにおいて喘息などの治療に用いられるとともに食品としても供されているNigella sativa種子から,マウス初代培養肝細胞を用いた脂質代謝促進作用を指標に活性成分を探索し,活性成分としてdolabellane型新規ジテルペンアルカロイドnigellamine A_1-A_5,B_1-B_3,CおよびDを単離・構造決定した.Dolabellane型ジテルペンは,これまでに軟体動物や褐藻類,苔類から単離されているが,高等植物からの報告は殆どなく珍しい例である. また,地中海沿岸地域を原産とし,日本においてもハーブとして用いられるセイジ(Salvia officinalis,葉)に,オリーブ油負荷マウスでの血中中性脂質上昇抑制作用が認められ,活性を指標に分離・精製した結果,活性成分としてabietane型ジテルペンcarnosic acidを見いだした.更に高脂肪食飼育マウスにおいて,carnosic acidは5mg/kg/day(p.o.)の2週間連日投与で,その内臓脂肪の有意な蓄積抑制作用が認められた. 一方,エジプト伝統薬として慢性の便秘症や糖尿病などの治療に用いられてきたコロシント(Citrullus colocynthis,果実)について,ショ糖負荷ラットにおける血糖値上昇抑制作用及びI型アレルギー反応即時相のin vivoモデルである受身皮膚アナフィラキシー(PCA)反応に及ぼす影響を検討したところ,有意な抑制作用を見出した.活性を指標に分離・精製し,主要cucurbitane型トリテルペン配糖体cucurbitacin E 2-O-β-D-glucopyranosideが活性成分であることを明らかにするとともに,新規cucurbitane型トリテルペン配糖体colocynthoside AおよびBを単離し,それらの化学構造を決定した.その他,主にサハラ砂漠などに分布し,子宮出血や婦人病の治療に用いられるアンザンジュ(Anastatica hierochuntica,全草)から新規骨格のフラバノンanastatin AおよびBおよび新規ネオリグナンhierochin A-Cを単離,構造決定した.含有成分について肝保護作用を検討したところ,anastatin AおよびBに強い活性を見出すなど,本研究課題の当初計画についてほぼ達成したものと考えられる.
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