研究概要 |
本研究では、以下の成果が得られた。 1.細胞上で観察されるレーザースペックルの特性 細胞膜の屈折率、細胞培地の屈折率から考えると、細胞上で観察されるレーザースペックルは単に細胞膜状で散乱された光によるものではなく、細胞内部にまで光が到達し、内部に於いて散乱された光の影響も加わり生成されていることが判明した。また、生細胞で観察されるスペックルは、細胞構造による殆ど動かない基本的なスペックルに、細胞活動により活発に動くスペックルが重なって観察されていることが分かった。また、細胞の環境温度の違いにより、スペックルの動きも変化し、スペックルの動きを調べることで細胞活動の情報を得られる可能性があることが示された(Y.Hirakawa et al., Jpn.J.Appl.Phys., 44(2), L85, 2005) 2.スペックルの動きの周波数解析 現在、レーザースペックルの評価はフーリエ変換を用いる方法を利用しているため、その動きの周波数スペクトルを得ることができる。周波数スペクトルを生細胞と固定化細胞で比較を試みたところ、生細胞では数Hz付近に独特なピークが現れることが分かった。このピークを取り出して評価することで、生細胞の活動状態を容易に定量化できる可能性がある(Y.Hirakawa et al., Technical Digest of CELO 2005)。 3.同時蛍光観察法の検討 本装置では蛍光を動じ観察することが可能であるため、通常の染色や遺伝子導入による蛍光観察はもちろん、レーザースペックルの細胞に優しい観察法である利点を生かした、自家(自発)蛍光観察が可能な生体分子に関して検討した。その結果、レーザー光源をファイバーレーザーなどの超短パルスレーザーを用いることで、多光子励起により蛍光観察が可能出ることが分かった。また、超短パルスレーザーを用いてもレーザースペックルは通常通り観察できることも確認できた。 以上のように、レーザースペックル蛍光顕微鏡は、蛍光によりミクロな生体分子の動態を、レーザースペックルにより細胞全体のマクロ動態を評価できる可能性のあることを示すことができた。
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