研究概要 |
ペプチド性医薬品の効率的な生体内送達を実現すべく,研究代表者らが独自に開発した気中懸濁被覆法によるマイクロカプセル(MC)化技術・ハイドロゲルのナノサイズ化技術を基本として,以下の素材,製剤化検討,製剤特性評価を実施した。 1)長時間遅延放出型MC:乳糖核粒子・インスリン被覆層・P(EA-MMA-HEMA)放出制御膜からなるマイクロカプセルは,デリケートな物性を持つペプチド医薬品に対してそれを安定に封入・保存でき,また,内包インスリンの長時間遅延放出に基づいて経口投与後の大腸におけるインスリン吸収を可能にした。薬理学的利用能は現状では5%であり,添加剤の選択/処方の最適化により更なる向上を図りたい。 2)周期的パルス放出制御型MC:温度応答性の要となるP(NIMAAm)ナノ粒子への生分解型架橋剤PCLマクロマーの導入は温度応答性放出速度差の向上をもたらすこと,感温性直鎖状高分子の適用は従来困難であった低温側での放出抑止と微小温度差でのオンーオフ型放出に有用であることを見出せた。温度非応答性成分の生分解性素材への切り替えと生分解化直鎖状感温性高分子の開発によってシステム全体の生分解化を目指したい。 3)温度・pH応答性ポリマーナノゲル粒子を用いた経口投与型ミクロ粒子:薬物封入法の改善によって実用的に適用できるレベルへの薬物含量(20%)の向上を認めた。また,AFMによるナノゲル粒子-ムチン間相互作用の評価法を確立できた。薬物封入効率・放出特性・粘膜付着性・薬物腸管吸収促進効果など多面的な特性の整合性を取りながらその最適化を図り,最終的にはナノゲル粒子のレイヤリングによるミクロ粒子化を気中懸濁法で行い取扱性・服用性に優れた最終剤形にしたい。 4)乾式微量調製技術の開発:新たに調製した生分解性微粒子粉末を用いて1gオーダーで徐放性微粒子製剤を調製できる乾式被覆プロセスの開発に成功した。
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