研究課題
基盤研究(C)
ブラジキニン(BK)は末梢だけでなく、中枢においても炎症と深い関係があると示唆されている。中枢神経系において免疫を司っているのはミクログリアであり、活性化ミクログリアはマクロファージ同様、様々なサイトカイン等を放出し、炎症や傷害、アルツハイマー病やエイズを含む様々な神経変性疾患の際に重要な役割を果たしていることが報告されている。そこで中枢においてミクログリアにおけるBK受容体とそのシグナル系、およびその機能を検証した・1)ブラジキニンの神経保護作用:意外なことにミクログリアにおけるBKの作用は細菌毒リポポリサッカライド(LPS)によって過剰に遊離されるサイトカイン(腫瘍壊死因子TNF-αやインターロイキン1β)を抑制することが判明した。またそのメカニズムとして、プロスタグランジンE2の放出とEP2/EP4受容体を介する細胞内サイクリックAMPの上昇によるものであることを解明した。さらに、ニューロン・ミクログリア共培養下でLPSによって引き起こされるニューロン死をブラジキニンが軽減するかどうかを検証したところ、用量依存的に神経細胞死を減少させた。一方、ニューロンにもBK受容体があるので、TNF-αによって直接引き起こされるニューロン死がBKによって軽減されるかどうかを検証したところ、ニューロンしか存在しない場合はBKにニューロン死抑制作用はなかった。この結果より、BKはミクログリアに作用し、おそらくミクログリアのB1受容体を介してLPSによる過剰な炎症性サイトカインの放出を抑制し、炎症性サイトカインによるニューロン死を軽減させることが示唆された(Nodaら、2006)。2)ブラジキニンによるミクログリアの遊走性増加:遊走性増加のメカニズムとして炎症・障害時にしか発現してこないタイプのB1受容体が機能していること、Gタンパク質を介したCa依存性カリウムチャネルの開口が必須であることを発見した(Ifukuら、2005)。また、ベルリン・MDCの協力を得てBK受容体ノックアウトマウスを用いてケモタキシス(BKが存在する方向へ移動していく性質)を検討したところ、やはりB1受容体が主役を担っていることが判明した。さらにBKとATPによる遊走性増加のメカニズムを比較検討したところ、全く異なるメカニズムであることが判明した(Ifukuら、投稿準備中)。
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