研究課題
基盤研究(C)
本研究において、3T3-L1脂肪細胞系を用いた実験により、酸化LDL(OxLDL)と糖化後期生成物(AGE)リガンドが成熟脂肪細胞に取り込まれると、ROS産生を介してレプチンの産生量が減少することを初めて見出した。加えて、OxLDLが異なる酸化変性脂質を介し、かつ異なる分子機序により、悪玉アディポサイトカインであるPAI-1とレジスチンの発現増大を誘導することを見出した。すなわち、これら酸化ストレス産物(OxLDL,AGE-BSA)は、肥満と類似のアディポサイトカイン類の産生異常を誘発することを明らかにした。さらに、レジスチン発現増大において、細胞生物学的に興味深い「過酸化脂質成分が翻訳活性化を引き起こす」という現象を見出した。近年、アディポサイトカイン分泌異常に脂肪組織の酸化ストレス・炎症反応が関与しているとの報告が相次いでいる。本研究の成果により、酸化ストレスとアディポサイトカイン産生異常を関連づける上でのメディエーター候補としてOxLDLやAGE産物が浮上してきた。今後、in vivoにおいて、これらの産生が起こっているかの検証を待たねばならないが、脂肪細胞のアディポサイトカイン産生に対する酸化変性脂質、およびAGEリガンドの影響は、顕著である。よって、これらのリガンドのアディポサイトカイン産生誘導の分子機構解明は、メタボリックシンドロームの予防・治療のための創薬標的として有望である。
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