研究課題
基盤研究(C)
我々は、抗酸化PCモノクローナル抗体(DLH3)を用いた酸化LDL高感度測定系の開発を通して、ヒト血漿中に酸化LDLの実在を示してきた。動脈硬化の発症要因である酸化LDLは、酸化LDLは多様な修飾を受けた不均一な粒子の集合であり、生体内の酸化LDLの具体的な性状ではいまだ明らかにされていない。本研究では、ヒト血漿から生体内酸化LDLを単離し、そのapoBタンパク質および脂質に対する変性構造を明らかにすることで、生体内でのLDLの酸化変性機序、生成した酸化LDLの代謝動態、そして血漿酸化LDL値の臨床的な意義を、より明確化することを目的とする。DLH3抗体を用いた測定形に基づく推定で、血漿中の酸化LDLはLDL中の1/10000程度と極めて微量である。そこで、修飾タンパク構造を高感度で分析可能なESI-LC/MS/MS法を導入することにした。アクロレイン及び4-ヒドロキシノネナール(HNE)で修飾したヒトLDLを、トリプシン消化し質量分析装置にかけたところ、アクロレイン修飾リシン残基、HNE修飾ヒスチジン残基を含むapoB由来修飾ププチドの検出および同定に成功した。これら代表的な酸化的修飾部分は、酸化変性の良いマーカーとなり、生体内酸化LDLの分析を進める上で非常に有用である。また、酸化LDL中の酸化リン脂質や酸化ステロールのMSでの検出にも成功した。血漿酸化LDLの分析には、DLH3抗体、あるいは酸化LDL吸着性膜を用いて血漿中の酸化LDLの濃縮・分離が必要である。本年度、予備的な検討では血漿中の酸化LDL分離に成功したが、さらにスケールアップと回収条件の改良を目指している。またヒト血漿に加え、動脈硬化モデルであるapoEノックアウトマウスの血漿や動脈硬化巣から酸化LDLを分離・解析し、さらにヒト循環器疾患患者の血漿中の酸化LDLについても検討可能な系にしたいと考えている。
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