研究概要 |
ガン転移促進因子EMMPRIN機能解析とその抑制法およびガン細胞の薬剤耐性克服を目的として検討し,以下の成果を得た. 1.ガン細胞膜上のEMMPRINは,周辺の正常細胞からガン転移促進酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)産生を促進することに加えて,EMMPRIN自らがMMP-1/コラゲナーゼー1を特異的に捕捉すること,この捕捉にはMMP-1のヒンジ領域が関わることが判明した.また,正常細胞によるガン細胞上のEMMPRINの発現促進機構について解明し,報告した. 2.EMMPRINにはproMMP-1も活性型MMP-1も結合能があること.さらに捕捉されたMMP-1は生理的条件下に容易に活性型に変換されることが判明した.また,活性型MMP-1の結合は,ガン細胞の浸潤活性を著しく促進することも明らかとなった. 3.MMP-1ヒンジ領域に対応する合成ペプチド(17mer)は,MMP-1やproMMP-1のEMMPRINへの結合を効率良く阻害した.それに伴ってMMP-1に起因するガン細胞の浸潤能も阻害された.このことは,ヒンジ領域ペプチドおよびその誘導体が,ガン細胞の浸潤阻害剤として有用であることが判明した.当該ペプチドおよびその誘導体をガン浸潤・転移阻害剤とする特許を出願した(特願2005-3222799). 4.薬物排出機能を有するP-糖タンパク質(P-gp)に対するポリメトキシフラボノイド・ノビレチンの作用を詳細に検討し,ノビレチンが当該タンパク質機能を濃度依存的に阻害することが明らかとなった.また,ガン化学療法剤シクロスポリンとノビレチンとの併用は,低用量でのシクロスポリンのガン細胞の増殖抑制作用が期待できることが判明した.新規抗ガン浸潤・転移薬候補としてトリプトリドを開発し,その作用機序について報告した.
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