研究概要 |
脳微小血管内皮細胞において血管内皮増殖因子VEGFは最も重要な機能調節因子のひとつである。そこで,平成17年度はプロテオグリカン合成の調節およびグリコサミノグリカン糖鎖形成の調節についてヒト脳微小血管内皮細胞の培養系を用いて検討し,以下の結果を得た。(1)VEGF165はヒト脳微小血管内皮細胞の細胞密度が高いときにプロテオグリカン合成を高進する。(2)このような作用はVEGF中和抗体で消失し,PIGFでは認められず,Vamminでミミックされたので,VEGF165はVEGFR2を介してプロテオグリカン合成を促進すると考えられた。(3)細胞層および培地に蓄積したプロテオグリカンのDEAE-Sephacel陰イオン交換クロマトグラフィー,Sephamse CL-4Bによるゲルろ過,およびSepharose CL-6Bクロマトグラフィーによる分析の結果,VEGF165が大型のヘパラン硫酸プロテオグリカン分子種の合成をヘパラン硫酸糖鎖の伸長に影響を及ぼすことなく促進することを示していた。(4)SDS-PAGEおよびWestern blot分析によるコア蛋白の解析の結果,VEGF165がヘパラン硫酸プロテオグリカンの大型分子種パールカンの合成を促進することが分かった。(5)半定量的RT-PCRによってパールカンコアmRNAレベルの上昇も確認された。(6)しかしながら,蛍光標識糖鎖電気泳動分析によると,パールカンのヘパラン硫酸糖鎖の二糖組成には変化は認められなかった。以上より,VEGF165がVEGFR2を介してパールカンコアの合成を誘導することが明らかとなった。
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