研究概要 |
大阪府及び愛知県において採取した表層土壌から得た抽出物はS.typhimurium TA98株に対しS9 mix非存在下で、1,240〜233,000revertants/mg抽出物の変異原性を示した。土壌抽出物からSephadex LH-20カラム及びシリカゲル中圧カラムにより精製した変異原性画分をODS中圧カラムで分画することにより変異原性画分Fr.1〜5を得た。各画分の土壌抽出物の変異原性に対する寄与率はFr.1:45%、Fr.2:15%、Fr.3:25%、Fr.4:5%、Fr.5:10%であった。各画分をHPLCによりさらに分画した結果、Fr.1及びFr.3の変異原性がそれぞれジニトロピレン類及び新規化合物3,6-ジニトロベンゾ[e]ピレン(DNBeP)によるものであることがわかった。また、Fr.2、Fr.4、Fr.5をHPLC分画することにより、各画分から1種類ずつ主要な変異原性物質を単離した。それらは質量分析の結果、いずれもニトロアレーンであると予想された。各変異原性物質のHPLCの保持時間は、これまでに環境中から検出されているニトロアレーンのそれと異なっていた。3,6-DNBePはネズミチフス菌TA98、TA100、YG1024、YG1029に対し、S9 mix非存在下において極めて強い変異原性を示し、1nmolあたりTA98に対し285,000revertantsを誘発した。この活性は、既知変異原性物質中、最も活性の強い1,8-ジニトロピレンのそれと同程度であった。また、3,6-DNBePがTA98のO-アセチル転移酵素高産生株であるYG1024に対し、親菌株より顕著に強い活性を示したことから、変異原性発現にO-アセチル転移酵素による代謝が関与していることがわかった。
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