研究概要 |
ラット小腸の摘出反転腸管組織を用いてグリセロール取り込みの解析を行った.反転腸管でのグリセロール取り込みは顕著な濃度依存性(飽和性)を示し,担体輸送の関与が示唆された.受動輸送の関与もみとめられたが,担体輸送が線形となる低濃度域では,担体輸送が主な輸送メカニズムとなっていた.さらに,この担体介在性グリセロール輸送は,グリセロール及び一部の類似物質に特異的なNa^+依存性の二次性能動輸送担体(トランスポーター)によるものであり,高い輸送効率で知られるD-グルコースのトランスポーターに匹敵する輸送効率を有することが示唆された.ラット小腸の閉鎖腸管ループ及び一回灌流系でのグリセロール吸収についても一連の検討を行い,その吸収(輸送)特性が反転腸管で見出された輸送特性とほぼ合致することを確認した.以上により,腸管組織レベルにおいてグリセロール特異的なトランスポーターの存在を機能的に検証することができた. Na^+依存性のグリセロール担体輸送機能を有するモデル培養細胞系としてHCT-15細胞が見出されたが,グリセロール輸送のミカエリス定数(15μM)はラット腸管での値(1mM程度)を大きく下回り,異なるタイプのトランスポーターの存在が示唆された.しかし,各種薬物等による阻害特性には大きな差異はみとめられなかった.したがって,HCT-15細胞をグリセロールトランスポーターの基質(ないし阻害剤)の探索等の目的に利用することは可能と考えられる.また,HCT-15細胞は,Na^+依存性グリセロールトランスポーター群の同定及び機能解明のためのモデル細胞系として有用と考えられる.本トランスポーターの経口薬物送達経路あるいは医薬品開発の標的としての利用等が期待されるところである.
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