研究概要 |
ラット褐色脂肪細胞において,容量性Ca^<2+>流入の制御と細胞骨格アクチン構築との関係を細胞内Ca^<2+>濃度測定法および蛍光標識したphalloidinによるアクチン染色法を用いて検討した.Noradrenalineはや小胞体Ca^<2+>ポンプ阻害剤であるthapsigarginは小胞体のCa^<2+>ストアを枯渇させることにより容量性Ca^<2+>流入を活性化する.これらの薬剤投与中に細胞骨格アクチンの分布が変化しているかどうかを調べたところ,大きな変化はないことがわかった.細胞をアクチンの脱重合剤であるcytochalsin Dやlatrunculin Aによって処理してもnoradrenalineならびにthapsigarginによる細胞外からのCa^<2+>流入は阻害されなかったことから,容量性Ca^<2+>流入の活性化と維持にはアクチン骨格の影響が少ないと考えられた.一方,細胞外ATPはP2受容体を介して小胞体からのCa^<2+>放出を引き起こすとともにnoradrenalineやthapsigarginによって活性化された容量性Ca^<2+>流入を阻害する.ATPを細胞に投与するとアクチンは細胞膜近傍に強く集積し,細胞形態も大きく変化すること,およびこれらの効果はP2受容体を介していること,がわかった.cytochalsin Dやlatrunculin A存在下では,ATPによるアクチン重合は観察されず,容量性Ca^<2+>流入阻害も起こらなかった.以上のことから,細胞ATPによる細胞骨格アクチンの再構築は容量性Ca^<2+>流入阻害と関連している可能性が高いことが推察された.
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