研究概要 |
ヒト・グロビンβ-ファミリー遺伝子群の発現スイッチングに重要な働きをしているLocus Control Region(LCR)は、発生過程で最初に発現するε-遺伝子の25-kb上流に存在し下流遺伝子群を遠隔制御している。この要因としてLCRのなかで最も強力なエンハンサー活性をもつDNase I hypersensitive site(HS)-2領域に赤血球特異的エンハンサー結合タンパク質であるNF-E2が結合し、本領域のヌクレオソーム構造をリモデリングすることによる転写制御が考えられる。このHS-2領域に焦点を当て周期性bentDNAを基にクロマチン構造にっいて実験を行った。BentDNA構造を含むヌクレオソームがその近辺ヌクレオソームの整列化のキー・ヌクレオソームとして機能し、エンハンサーとの距離に依存してエンハンサー活性制御がなされていることがin vitro及びin vivoの実験から分かった。さらに高次クロマチン構造構築の場合には、第一段階は2個のヌクレオソーム(dinucleosome)形成であり、高次クロマチン構造解析の基本情報単位と考え、dinucleosomeDNAライブラリーを作成し、Nucleosome reconstitution assay, Southern blotting assay, Concatemer oligo bent assay, computer analysis等を用い詳細な解析を行った。クロマチン構築の基本となるdinucleosomeの形成情報はゲノムDNA上に埋め込まれており、bentDNA構造を含むキー・ヌクレオソーム形成情報に必須因子であるという知見を得た。現在は、LCRのみならず他のグロビン遺伝子制御領域、さらには生物間の保存性について、クロマチン構築機構と遺伝子発現制御の解析を行っている。
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