研究分担者 |
松本 孝朗 愛知医科大学, 医学部, 助教授 (60199875)
岩瀬 敏 愛知医科大学, 医学部, 助教授 (90184879)
西村 直記 愛知医科大学, 医学部, 講師 (40278362)
犬飼 洋子 愛知医科大学, 医学部, 講師 (10308950)
佐藤 麻紀 愛知医科大学, 医学部, 助手 (60351102)
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研究概要 |
精神性発汗の神経機序における脊髄の役割を皮膚圧迫と鍼通電刺激の方法を使って検討した。実験I.皮膚圧迫による手掌・足底の発汗抑制の様式を検討した。頭部から踵までの体側面の13点を圧迫して暗算による手掌・足底の発汗応答を見た。個人差はあるが,手掌発汗はC3からL3の皮膚分節領域を圧迫したとき同側性に抑制された(最大効果は通常T3領域)。結局,手掌発汗は温熱性発汗と同様に,皮膚圧迫により脊髄機構を介して抑制されることが確認された。実験II,5Hz,100Hzの鍼通電刺激により高位中枢より下位の機構を介して手掌・足底発汗が抑制されるが,その部位が脊髄か汗腺かを明白にするため,微小電極法によって皮膚交感神経活動SSNAを記録して,汗腺の神経活動に対する反応性を調べた。個々の発汗波と,それに対応するSSNAバーストについて,発汗波の立ち上がり速度とバースト振幅を求めて相関を検討したところ,回帰直線の勾配は5Hzでも100Hzでも通電刺激前後で有意な変化は認められなかった。結局,鍼通電刺激は脊髄に作用することが確認された。実験III.鍼通電刺激による効果を5Hz,100Hz以外の25Hzと300Hzについて調べた。25Hzでの刺激は高位中枢に作用して発汗抑制を起こすが,300Hzには発汗抑制効果がないことが判明した。実験IV.鍼通電刺激が手掌・足底の皮膚血流量に及ぼす効果を検討した。5Hzと100Hzでは足底の血流量を両側性に抑制したが,手掌発汗は変わらなかった。300Hzでは手掌・足底とも変化しなかった。以上から,精神性発汗において脊髄は反射の中枢として統合機能を発揮することが実証された。おそらく脊髄の中間質外側核の節後線維には各種機械受容器に由来する感覚性信号が分節性に入力して下行性信号を修飾している。しかし,統合機構には機能による差があり,精神性発汗系と皮膚血流調節系とでは様相が異なる。
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