研究概要 |
ATP感受性K^+(K_<ATP>)チャネルは,ABC蛋白質の一種であるスルフォニルウレア受容体(SUR)と,二回膜貫通型K^+チャネルサブユニットKir6.xから構成される.1つのK_<ATP>チャネルは,4つのSURと4つのKir6.xからなる異種8量体である.SURは,17箇所の膜貫通領域と細胞内側のN末とC末を有する蛋白質である.またSURは,細胞内のヌクレオチドと結合する2つのヌクレオチド結合ドメイン(NBD1,NBD2)を有する.ニコランジルなどのKCOはSURの第17膜貫通領域と結合して,K_<ATP>チャネルを活性化する.SUR2AとSUR2Bは,C末の42アミノ酸(C42)だけが異なり,同一の第17膜貫通領域を有するが,SUR2B/Kir6.2チャネルは,SUR2A/Kir6.2チャネルより100倍も高いニコランジル感受性を有する.本研究では,C42がNBD2に近接した位置にあることから,C42とNBDの関係,NBDと第17膜貫通領域の薬物受容体の関係に注目し,SURがどのようにK_<ATP>チャネルの機能を調節するかを分子生物学的手法,パッチクランプ法,モデルを用いた計算科学的手法を組み合わせて詳細に解析した. その結果,(1)細胞内にヌクレオチドが存在しK_<ATP>チャネルが活性化されるときには,同一分子内のSUR2のNBD1とNBD2がダイマーを構成すること,(2)C42がこのダイマーの構成されやすさを調節しており,SUR2BのNBDの方がSUR2AのNBDよりダイマーを構成しやすいこと,(3)またNBDと第17膜貫通領域の薬物受容体の間には明瞭なアロステリック連関があること,(4)そのため細胞内のヌクレオチド組成が同じであれば,ニコランジルはSUR2A/Kir6.2チャネルよりSUR2B/Kir6.2チャネルより高いポテンシーで活性化することが判明した.
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