研究概要 |
気管支喘息の主要な病態のひとつである気道過敏性は各種刺激に対して気道が過剰に収縮する状態で、気道平滑筋の機能的及び形態的変化によって生じる。炎症細胞から分泌されるinterleukin(IL)-4,-5,-13などのTh2サイトカインが喘息の病態に強く関わることが知られている。はじめに本研究ではIL-4とIL-13が気道平滑筋の収縮能に及ぼす影響を検討し、IL-4で平滑筋細胞包埋ゲルの収縮が著明に減少し、IL-13で著しく増強され、そのどちらもPI3-kinase阻害薬のwortmanninで阻害され、これらの反応がPI3-kinaseを介しているとの結果を得た。これらのTh2サイトカインはCa^<2+>濃度に影響を及ぼさず、平滑筋細胞の収縮に関わるミオシン軽鎖リン酸化レベルにも差を認めなかった。さらに、平滑筋の弛緩に関わるミオシン脱リン酸化酵素の発現量とその活性に影響する脱リン酸化酵素のリン酸化レベルを検討したが、これにも差を認めなかった。従って、IL-13とIL-4は単一の平滑筋レベルの収縮には影響を与えないものと考えられ、細胞外環境の調節により組織収縮能が変化する可能性が考えられた。この観点からマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現に与えるTh2サイトカインの作用をリアルタイムPCRで検討したところ、MMP-1,2,3,9,13のうち、MMP-1のmRNA発現量がIL-13とIL-4で増大しており、その増大量はIL-4で著しかった。従って、Th2サイトカインは平滑筋細胞からMMPを分泌させて細胞外マトリックスを融解させ、その発現量によって組織収縮が増大ないし減弱するものと考えられた。MMP-1は病的条件下で上皮細胞でも産生されることが知られており、上皮細胞が気道平滑筋の収縮能に与える影響のメカニズムの一端を本研究は明らかに出来たものと思われる。
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