研究課題
基盤研究(C)
小胞体内での構造異常蛋白質蓄積により誘導される小胞体ストレス経路は、細胞に対する種々のストレスにより誘導され、細胞保護に働く。しかし、それらのストレスが過剰な場合には、アポトーシスが誘導され細胞ごと取り除かれる。しかしながら、小胞体ストレスと種々の病態との関連や、小胞体ストレスによるアポトーシスシグナル伝達経路、生体中におけるアポトーシスの抑制系については、いまだ不明の点が多い。本研究において、LPSを腹腔内投与したマウスをモデルに使用し、LPSにより小胞体ストレス-CHOP経路が肺胞上皮やマクロファージに誘導されることを見出した。CHOPは、小胞体ストレスにより誘導され、細胞にアポトーシスをおこす転写因子である。Chopノックアウトマウスでは、LPS誘導性の肺の炎症像および、肺胞上皮やマクロファージのアポトーシスは抑制されており、CHOPを介する小胞体ストレス経路が、炎症病態形成に関与していることが明らかとなった。また、大量の免疫グロブリン産生を特徴とする骨髄腫の病態と小胞体ストレスの関係について検討した。検討した数種の骨髄腫由来細胞株のうちで小胞体ストレス経路活性化のマーカーである活性型XBP-1が産生され、小胞体シャペロンであるBiPが発現している株は、小胞体ストレス誘導剤による細胞死に耐性を示した。骨髄腫患者由来の腫瘍細胞の検討では、活性型XBP-1発現を認める症例では、病期が進行しており、予後不良であった。大量の免疫グロブリン産生を可能にするために、病期が進行するとともに小胞体ストレス経路が活性化されるものと考えられ、骨髄腫細胞における活性型XBP-1発現が、予後推定の有用な指標となりうることが明らかとなった。今後は、CHOP発現からアポトーシスに至る経路を明らかにするとともに、小胞体ストレス経路を標的とした骨髄腫治療の可能性について検討したい。
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