研究概要 |
ストレス応答、転写制御、テロメア維持、老化において、蛋白が核内サブドメインに集積することによりそれら蛋白の機能が制御されていることが知られている。 申請者は、MORC3が、PMLボディーに局在する2種類の蛋白の局在化に関わることを明らかにした。まず、恒常的にPMLに存在するSplOOは、MORC3を発現した細胞において共局在し、MORC3のATPase変異体E35A(MORC3-E)では、ドット形成できず拡散した。さらに、siRNAによりMORC3の発現を抑制することによっても、Sp100は、MORC3-Eの時と同じように、拡散した。一方、DNA損傷などの外的刺激により、PMLに集積して活性化することが知られている癌抑制因子p53は、MORC3の過剰発現により、PMLに集積し、p53結合配列を持つルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を誘導した。また、MORC3の過剰発現は、下流遺伝子として知られるp21の蛋白レベルの発現も誘導した。MORC3のマウスホモログをノックアウトしたマウスより樹立した胎児繊維芽細胞株(MEF)において、アドリアマイシン刺激によるp53の活性化をp21の発現により解析したところ、Morc3欠損MEFでは、p21の発現誘導が抑制されていた。さらに、Morc3欠損マウスは、18.5日胚では、メンデル遺伝に沿った比率で生存していたが、全例、出生時または出生1日以内に死亡した。欠損マウスは、造血に異常があり、単球への分化の障害と胸腺の未発達を認めた。Fetal liverを用いたin vitroのコロニーassayでは、GM-CSFには反応して、単球系の細胞に分化したが、M-CSFには反応しなかった。今後、さらに、造血細胞分化におけるMorc3の関与を明らかにしていきたい。 また、本年度、MORCファミリー蛋白の混乱していた名前をMORC1,2,3,4(ヒト)、More1,2a,2b,3,4(マウス)とHUGOおよびMGDに正式に登録した。
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