研究課題
基盤研究(C)
我々は、従来、主に細胞質に局在するとされてきたGSTπが、多くのがん細胞で核にも存在すること、その核に存在するGSTπが細胞の抗がん剤感受性を規定する因子のひとつであることを明らかにしてきた。そこで、本研究課題では、GSTπの核移行に及ぼす酸化ストレスの影響と酸化的DNA損傷の防御における核GSTπの役割について検討した。過酸化水素(H_2O_2)の暴露によって、時間的及びH_2O_2の濃度依存的に核GSTπの蓄積量が有意に増加した。人為的に核GSTπの存在量を低下させた状態では、H_2O_2の暴露によって、アポトーシスが顕著に誘導されることを見出した。さらに、核GSTπが低下した状態では、核膜の脂質過酸化由来の高反応性アルデヒドによる核酸塩基の酸化的修飾が顕著に起こること、GSTπが存在する場合は、アルデヒドがGSTπの酵素活性によってGSH抱合を受けるためにその反応性を失い、核酸塩基の酸化的修飾が抑えられることを見出した。つまり、核GSTπが、酸化ストレスから核を防御する因子の一つであることを明らかにした(Free Radical.Biol.Med.2004)。さらに、婦人科癌における核GSTπの臨床的意義についても検討した。我々は、卵巣癌、子宮体癌、子宮頚癌の臨床検体の免疫組織染色を実施し、核GSTπの存在と患者の予後との相関に関して解析した結果、核GSTπが陰性の場合と比較して、核GSTπが陽性の場合は予後が著しく不良であることを見出した。また、化学療法後に核GSTπが陽性に転化した症例を高頻度に見出した。これらの研究成果から、核GSTπの存在と薬剤抵抗性との間には、正の相関があることが示唆された。婦人科癌治療において抗がん薬を選択する上で、核GSTの存在の有無が重要な指標となる可能性があると考えられた(Clinical Oncology, 2005)。
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すべて 雑誌論文 (8件)
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