研究課題
基盤研究(C)
細胞内でフォスホリパーゼA_2を抑制することによって抗炎症作用を示すCa^<++>依存性酸性リン脂質結合タンパク質であるアネキシン1は、ステロイドにより発現誘導される蛋白のひとつである。本研究では、抗炎症タンパク質であるアネキシン1の細胞内外での作用機構を明らかにし、本タンパク質の限定分解産物である抗炎症ペプチドを検索し、新たな抗炎症ペプチドを開発と炎症を起因とする病態制御を目的とする。アネキシンは、現在15種類検出されているが、酸性リン脂質と結合するC末端の4回の繰り返し構造とN末端の各アネキシン特異配列からなっており、各アネキシンの性質はN末端の特異配列が決定する。アネキシン1のN末端は、細胞内で蛋白分解酵素により限定分解されることが判明した。アネキシン1のN末端のペプチドを2種類合成し、本ペプチドの抗炎症作用を好中球の活性酸素産生抑制能を指標として解析すると、100μM以上の高濃度で抑制されたが、低濃度では効果なかった。炎症部位では集積した好中球が機能した後、マクロファージに貧食されなければ、ネクローシスにおちいり、組織を傷害する可能性がある。アネキシン1は酸性リン脂質であるフォスファチジルセリンに結合するが、好中球より分泌されたアネキシン1が、アポトーシスに陥った好中球の細胞外に露出したフォスファチジルセリンに結合し、マクロファージ側の受容体に結合し、貧食を促進するか否かを解析した結果、好中球に結合するが、炎症部位でのクリアランスには関与しない結果がえられつつある。今後、詳細に解析する予定である。また、アネキシン1のトランスジェニックマウスの作製に成功した。本マウスのフェノタイプは正常であることが判明した。さらに、雌雄ともに繁殖可能なこと、分娩比率も正常であることが判明した。種々の炎症を起因とする病態モデルのうち、エンドトキシンショックを付加してコントロールマウスと比較すると、Tgマウスの生存率が低いことが判明した。今後、本機構を解析するとともに生体レベルでの実験を行い、その作用を検証する。
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