研究概要 |
脂肪組織特異的にPPAR-γ2を過剰発現するように,脂肪細胞を標的にした発現ベクターであるAP2にラットPPAR-γ2cDNAを挿入したDNA構築物を作成し,ウサギ受精卵前核内にマイクロインジェクションを行った。その結果,1匹のファンダーウサギを得た。このファウンダーウサギをもとにF1ウサギを得て組織での導入遺伝子の発現をNorthern blot法で検討したところ,遺伝子導入ウサギの組織(特に大動脈とマクロファージ)で明らかにコントロールより高いPPAR-γ2 mRNAの発現が確認された。そこで,大規模な繁殖を行いF2ウサギを得て,通常食飼育下におけるPPAR-γ遺伝子導入ウサギの体重の推移血中のグルコースおよびインスリン値について検討を行った。しかし,これらの検討においていずれの項目もPPAR-γ遺伝子導入ウサギと通常ウサギとの間に有意な差は認められなかった。そこで,10%高脂肪食を4ヶ月間負荷して実験的肥満の誘導下におけるPPAR-γ遺伝子導入ウサギの体重の増加率,脂肪蓄積量,血中グルコースおよびインスリン値さらにグルコース負荷試験を行った。しかし,これらの検討においてもPPAR-γ遺伝子導入ウサギと通常ウサギとの問に有意な差は認められなかった。 これらの結果について,今回実験に使用した遺伝子組換えウサギが1系統のみであったことと,導入した遺伝子がラット由来であったことから,PPAR-γの発現量が十分で無かった可能性,また,PPAR-γの種差による点も否定できない。そのため,新たにヒトPPAR-γを高発現する系統の作成と高発現系統を使用した追試を行う必要があると考えられる。現在,ヒトPPAR-γ遺伝子組換えウサギ作成実験の継続により新たに2系統のPPAR-γ遺伝子組換えウサギを得ることに成功している。今後,これらのPPAR-γウサギにおけるPPAR-γの発現解析,表現型解析,肥満実験の追試を行う予定である。
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