研究概要 |
マラリア原虫は哺乳動物の体内に侵入後,直ちに肝細胞に至りここで増殖するといわれているが,他の臓器への侵入・増殖は起きていないのか,また肝臓に至るまでの原虫の移動はどのようになされているのか,この2点については十分解明されていない。我々はレポーター遺伝子を組み込んだトランスジェニック・マラリア原虫(Plasmodium berghei)を作製して,ハマダラカを介してマウスに注入し,生体内における原虫の分布・増殖を画像化しようと努めた。まず目的とする遺伝子(GFPあるいはルシフェラーゼ)を含むプラスミドを野生型原虫に組み込み,トランスジェニック原虫を得た。これらを使用してハマダラカ内でのスポロゾイトの発育や移動,特に唾液腺内における局在や吸血に伴う挙動などの知見を得た。さらにハマダラカのプロービングを通じてマウス皮膚内に移行したマラリア原虫が,24時間後も皮膚内で生存していることを示唆させる所見を得た。またプロービング42時間後,マウス肝臓内で原虫が増殖していることを確認した。さらにマウスのリンパ節において増殖しているとみられる現象を見出した。肝臓以外の臓器でマラリア原虫が増殖できることを示唆する新知見であり,さらなる証拠を求めて実験をすすめている。
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