研究概要 |
Trypanosoma brucei (Tb)の14-3-3タンパク質についてその性状と機能を研究している。 14-3-3は動植物の別なく、真核生物に広く分布し、これと結合する多くの蛋白質が報告されている。 これまでのところ,他のシグナル伝達関連分子同様リン酸化がその役割に重要とされている。 既に報告しているように,PCR法により、14-3-3遺伝子を探索、二分裂で増殖する原生生物であるTrypanosoma brucei (Tb)に既報の塩基配列とホモロジーの高いPCR産物が得られ、アミノ酸配列に訳すと、分子量が28kDa、リン酸化ペプチド結合部位や核外輸送シグナルなどの保存されているはずのモチーフが存在していた。そのような遺伝子が2種得られ、Tryp 14-3-3-typeI、IIと命名した。我々が改良して、極めてリークのないdsRNAi用プラスミドベクターpQuadraを開発した。これを用いて、14-3-3産生を抑えると、Tbの増殖速度が低下し、虫体内の核数やキネトプラストの数が増えていた。この現象はtypeHの抑制において、より著明であった。 一方、Tb14-3-3と結合する分子検索については,哺乳動物での経路とは異なり,全く新しい経路を確定しつつある。また、Raf-1などを用いてリン酸化に関わる反応やサイトを求めたが特定できない。ヒトではアイソフォームが8個あり,ダイマーを形成して働いているが,Tb 14-3-3ダイマー形成が機能と関連して一筋に説明できないことも判り,保存されている構造があるにも関わらず他の生物の14-3-3とは挙動が異なっており進化的な変遷も念頭において,解析を進める必要が生じ,さらに興味深い研究対象となった。 新しい14-3-3結合分子を見出したので,オカダ酸の作用など,これまでのリン酸化・脱リン酸化に関する報告をもとに研究を進めるべく,先ずダイマー形成の解析,そしてリン酸化部位解析についてミューテーション,アミノ酸置換を駆使した結果,今回の課題のテーマとしているTryp 14-3-3脱リン酸化については,現在のところ,リン酸化が逆に一般に考えられている脱リン酸化の働きに代わって,いわば鏡像の働きを示すという解析結果をえており,ヒトを始めとする哺乳動物の14-3-3とは大いに異なり,新しい経路を示唆する研究成果を得た。
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