研究課題
基盤研究(C)
ヘリコバクター・ピロリのcag病原性遺伝子群を持つ菌株に依存的な宿主細胞のNF-kBの活性化を引き起こすアッセイ方法の検討およびその未知因子の同定をおこなう事を目的に研究をおこなっている。本研究の遂行途中に、Nat.Immunol.にcag病原性遺伝子群を持つ菌株がタイプ4分泌機構を介してペプチドグリカンを細胞質内に打ち込み、宿主側の細胞質内のNod1がペプチドグリカンのセンサーとして働き、NF-kBの活性化が引きおこることが報告された。そこで、このNod1からNF-kBに至るシグナル伝達経路の詳細を解析するために、胃上皮株化細胞であるAZ-521細胞とMKN45細胞を用いて、cag病原性遺伝子群を持つ菌株と持たない菌株による刺激をおこなった結果、興味深いことに、MKN45細胞ではcag病原性遺伝子群を持つ菌株によるNF-kの活性化が起こるのにもかかわらず、AZ-521細胞ではNF-kBの活性化がほとんど認められなかった。この細胞の違いによるNF-kBの活性化の違いがNod1の発現の違いによるのかどうか明らかにする為に、Nod1のmRNAの発現をRT-PCRで調べたところ、MKN45細胞、AZ-521細胞ともに、Nod1の発現が認められた。次に、タイプ4分泌機構によるエフェクターの打ち込みが両方の細胞において機能しているかどうか明らかにする目的で、ヘリコバクター・ピロリのエフェクターとして明らかになっているCagAの細胞質内の存在量をチロシンリン酸化抗体によるウエスタンブロッティングにより調べてみた結果、MKN45細胞に比べて、AZ-521細胞におけるチロシンリン酸化CagAの量は非常に少なく、細胞内へのエフェクターの打ち込みには細胞特異性がある可能性が示唆された。
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