研究概要 |
樹状細胞は、種々の外来微生物成分(免疫アジュバント)を認識し、種々のサイトカインを産生することにより、生体防御に関与する。この認識にはToll様受容体(TLR)と呼ばれる一群の膜タンパクが極めて重要である。主に遺伝子欠損マウスを用いて、免疫アジュバントの認識機構、作用機構を明らかにした。これまでに、TLR7は、抗ウイルス活性を持つイミダゾキノリン誘導体を認識することを明らかにしていたが、ウイルス由来の1本鎖RNAもTLR7リガンドとして機能していることを明らかにした。また、2本鎖RNAを認識するTLR3,LPSを認識するTLR4によるI型インターフェロン(IFN)の誘導に、IκBキナーゼファミリーの中のinducible IκB kinase(IKKi/IKKε),TANK-binding kinase 1(TBK1)が関与していることを明らかにした。IKKi, TBK1は、TLRシグナルばかりでなく、ウイルス感染によるI型IFNの誘導にも関与していた。また、核酸を認識するTLR7/9は、形質細胞様樹状細胞(PDC)からのI型IFN産生を誘導するが、この機構にIKKαが必須であることを明らかにした。さらに、種々の樹状細胞を用いた実験系により、寄生虫由来の成分の中にIL-12を誘導する活性を見出した。この活性には、TLRシグナル伝達に必須のアダプター分子MyD88に依存しており、TLRのいずれかが関与すると考えられた。以上のように、免疫アジュバントの認識、作用機構に関する重要な知見を得ることができた。
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