研究課題/領域番号 |
16590406
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
免疫学
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 一郎 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (20206791)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2005年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2004年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 粘膜免疫 / 炎症性腸疾患 / 腸上皮細胞間リンパ球 / MICA / NKG2D / IL-15 |
研究概要 |
大腸炎を自然発症するT細胞レセプターα鎖欠損マウスの粘膜上皮においてIL-15の産生が著しく亢進していることを、定量PCRを用いて明らかにした。また慢性期の重症度の高い腸炎を発症したT細胞レセプターα鎖欠損マウスの病変部大腸粘膜より分離したββT細胞では、IL-15レセプター複合体の発現が著しく亢進していること、また病変部大腸粘膜より分離したββT細胞を試験管内でリコンビナントIL-15とともに共培養すると、濃度依存的に著しいDNA合成能を示すことが明らかになった。以上の結果をふまえてT3bプロモーターを利用してIL-15遺伝子をT細胞レセプターα鎖欠損マウスの腸管粘膜上皮に強制発現させた2重変異マウス(IL-15 Tg/T細胞レセプターα鎖欠損マウス)を作製した。肉眼的、臨床的、病理組織学的な解析の結果、得られた2重変異IL-15 Tg/T細胞レセプターα鎖欠損マウスは、T細胞レセプターα鎖を単独で欠損したマウスに比べて、腸炎の発症が早期より観察され、さらに重症遷延化することが明らかになった。重症腸炎発症2重変異マウスの病変部大腸粘膜より分離したββT細胞はIL-4を主体としたTh2型のサイトカインを発現し、またBcl-2の発現亢進を介して、病変部大腸粘膜に長期間にわたって生存・維持されることが明らかになった。また重症化腸炎発症T細胞レセプターα鎖欠損マウスの病変部大腸ββT細胞は高いレベルの活性化NKレセプター、NKG2Dを発現していることが明らかになった。Th2型サイトカイン産生性NKG2D^+ββT細胞を腸管局所発現MICA Tg/RAG2欠損マウスに養子移入し、移入後の腸炎の重症度をRAG2遺伝子単独欠損マウスと比較検討した。その結果、MICA遺伝子を有する2重変異マウスにおいて腸炎の程度が軽減することが明らかになった。今回報告者はヒトの潰瘍性大腸炎に酷似した自然発症慢性腸炎モデルT細胞レセプターα鎖欠損マウスを用いて、慢性腸炎の重症遷延化に粘膜上皮より産生されるIL-15が重要な役割を果たしていることが明らかにした。IL-15は組織常在リンパ球における活性化NKレセプターNKG2Dの発現を正に統御することが報告されており、T細胞レセプターα鎖欠損マウスで観察される慢性腸炎の後期病変の形成および重症遷延化には、大腸粘膜浸潤ββT細胞におけるIL-15/NKG2Dを介したシグナル伝達系が重要な役割を果たすことが窺えた。またMICA Tg/RAG2欠損マウスを用いたT細胞移入腸炎誘発モデルの解析結果より、ストレス誘導性恒常性逸脱化シグナルMICAは、粘膜炎症の制御に寄与することが明確に示した。
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