研究概要 |
1.フィブリノゲン(Fbg)γ鎖D領域の153Cys-182CysのS-S結合の役割について研究した。γ153CysをAlaに変異させた実験結果は、正常γ鎖と異なり、Aα鎖あるいはBβ鎖と複合体(AαγあるいはBβγ)を形成できないことがわかった。したがって、γ153Alaでは、細胞内でこれらの複合体を形成できないために最終的なFbgが組み立てられず、細胞外に分泌されないことが明らかになった。(論文1) 2.Fbgγ鎖D領域の319Asn,320Aspの役割について研究した。正常γ鎖と異常γ鎖の同時発現CHO細胞において、γ鎖319Asn,320Aspの2アミノ酸を欠損する異常Fbgは細胞内での組み立てはほぼ正常であるにもかかわらず、細胞からの分泌が低下していることを証明した。この結果より、γ鎖D領域の立体構造がFbg分泌機序に影響を及ぼすことが明らかになった。(論文3,6) 3.Fbgの組み立て・分泌におけるγ鎖387Ile残基の役割について研究した。γ鎖387IleをArg, Leu, Met, Ala, Aspに置換させる実験を行った。前4種はFbgの組み立てと分泌に影響は認められなかったが、Aspにおいては著しい低下が認められた。このことから、γ鎖387番のアミノ酸の性質および388番以降411番までのペプチド鎖の立体構造の重要性が明らかになった。(論文5) 4.Fbgの組み立て・分泌におけるBβ455Arg役割について研究した。γ鎖387Ile残基に相当するBβ鎖455Argが存在しないとFbgの分泌が起こらないことを明らかにした。また、Bβ455ArgをIle, Asp, LysとAlaに変異させた細胞株の樹立を行ったがうまくいかなかった。 5.Bβ111Ser欠損した異常Fbg症のヘテロ患者を発見した。変異部位はFbgのcoiled-coil領域あり、欠損によるFbgの組み立て・分泌への影響はなかった。(論文4)
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