研究概要 |
大規模離島である新潟県の佐渡島をフィールドとし,佐渡島在住の全園児・学童を対象とした4シーズンの継続調査により児本人のインフルエンザワクチン効果と児と同居する高齢者への効果を検討した。その結果ワクチン接種による児本人の発症予防に関してはおおむね有効であったが,その効果の程度はシーズンによる変動が認められた。また、児のインフルエンザ発症は同居高齢者の発症と関連することが示されたが,児のワクチン接種による高齢者の発症予防・重症化防止効果は明らかではなかった。なお高齢者発症家庭の25〜50%で最初の発症者,すなわち家庭への持ち込み者は小児であり,やはり高齢者予防の観点からも小児への予防対策が重要と考えられた。 さらに本フィールドの地域内外の人の出入りが比較的少なく、医療が地域内で完結する離島であるという特徴をいかし、島内の医療機関との連携により「地域インフルエンザ発生情報公開システム」を構築した。得られた患者情報から地理情報システム(Geographic Information System, GIS)による発生地図作成と疫学解析を行った。2病院小児科受診者を対象とした予備的研究からはA型で顕著な小学生の流行先行と,A型,B型のウイルス型による伝播様式の違いが示唆された。しかし続く2シーズンの20医療機関の協力による「地域インフルエンザ発生情報公開システム」データのGIS解析では同じA型中心の流行であっても流行伝播様式には差異が認められたことから、今後のモデリングおよび実用的な流行シミュレーションに向けて,継続的なデータの蓄積及び検討が必要と考えられた。 なお、毎週インターネットにて公開しているインフルエンザ発生地図はアクセス数も多く,「地域インフルエンザ発生情報公開システム」は地域の流行状況の適切な把握および早期の情報還元ツールとして有用と考えられた。
|