研究概要 |
1996年に実施された全国7地区の15〜79歳の女性住民を対象とした約4,500人の大規模な無作為抽出標本調査(骨粗鬆症予防のための疫学調査:JPOS study)および、1999年と2002年に3地区で行われた約1500人の追跡調査のデータベースを使用した。データには腰椎、大腿骨、橈尺骨の骨密度、踵骨の超音波骨強度、体格、筋力、運動習慣、労働強度、飲酒、喫煙、第二次性徴、月経・妊娠・出産や婦人科疾患および骨折の既往歴、食事習慣、カルシウム摂取量、血液および尿中の骨代謝指標が含まれている。なお、データの使用や遺伝子解析については対象者の文書による承諾を得るとともに、近畿大学医学部倫理委員会の審査を受け、個人情報保護に万全を期している。 1、追跡調査を行った3地区の対象者のゲノムDNAを用い、PCR-RFLP法や対立遺伝子識別アッセイ法によって、VDR(4カ所)、TGF-β(2カ所)、Osteocalcin、MTHFR、CYP19(2カ所)、CYP1A1(2カ所)、およびCOMT遺伝子の多型を同定した。ほとんどの遺伝子頻度は、先行研究と有意差はなかった。現在、PPARγ、Alox遺伝子などの多型を検索するとともに、骨形成促進条件の基礎的検討を行い、GDF-5などの塩基配列との関連を見ている。 2、VDR遺伝子の多型について、単独では骨密度への影響は小さかったが牛乳摂取など生活習慣との相互作用が見られた事を、学会誌に発表した。TGF-β,Osteocalcin,CYP19,CYP1A1,COMT遺伝子多型はそれぞれ単独では、骨密度と有意な関連を認めなかった。生活習慣の解析から、納豆摂取頻度が閉経者の骨量変化率に関係することがわかり、CYP1A1およびCOMT遺伝子で納豆摂取との骨密度への相互作用が見られた。また、CYP19遺伝子型により骨粗鬆症有病率に有意な差があった。
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