研究概要 |
研究結果として,(1)映像観察で,入室時にクライアントはアイコンタクトせず外来スペース全体を眼球の動きだけで見渡しており,身体姿勢の決定は無意識であると推定された,(2)大学新入生で沐浴人形の抱き姿勢をみると,左抱き84名中41名(43.6%),右抱き42名(44.7%),中抱き(対面抱き)1名(1.1%)で,これを1年後に調べたら,左抱き84名中50名(58.8%),右抱き33名(38.8%),中抱き1名(1.2%)と左抱きに変化していた.クライアントの左に位置する姿勢については手術時の術者,看護・介護時のサービス提供者等も同様であった.「左抱き」現象は心拍動説や右脳説から説明されてきたが,自然界には左側面から接触したり,左側面を内側にして回転する現象が普遍的に観察される. 考察としては,「左抱き」はヒトが生命体として持ち続けてきた左右差に由来し,これが環境の中でさらに学習され変容したもののようである.医療者が,やや左前にクライアントを診ている姿勢が乳児の「左抱き」に相似していて自然であり,医療面接の際の面接技法の指導にはっきり明記するべき結論が得られたものと考える.
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