研究概要 |
潰瘍性大腸炎やクローン病の炎症性腸疾患においては、主な治療薬の一つである副腎皮質ステロイド剤の効果がなくなる場合がある。このステロイド抵抗性に陥った患者では、ステロイドホルモン受容体であるレセプターhGRαの不活性な類型であるhGRβが末梢血単核球に多く発現しておりhGRβ mRNA発現量および,hGRβ/α比が一定以上の値を示していること,これを誘導する因子として,炎症性腸疾患患者で血液中に増加しているIL-7,IL-18のサイトカインが関与していること,を我々は見いだし報告した。そこで本研究では,更に(1)具体的な臨床検査法を作成すること,および(2)hGRβ mRNAを高発現した末梢血リンパ球の機能を抑制する効果的な方法を,現在使用可能な薬剤と体外循環の手法を用いて現実化することを目的とした。その結果、研究の結果、白血球除去療法で分離した潰瘍性大腸炎患者の末梢血Tリンパ球において、IL-18 receptorを発現している分画の割合は5-20%におよぶこと、また、潰瘍性大腸炎の活動性と血清中のIL-18濃度は相関し、この細胞分画がステロイド抵抗性に関与する可能性を示唆する結果を得た。そこで各種の白血球除去療法の前後でIL-18R(+)のTリンパ球数の変化の解析を試みた。現在までのところ臨床的背景や疾患活動性などとこれらの結果は相関しない傾向だった。今後も同様の検討を継続し、炎症性腸疾患における薬剤耐性の問題や治療効果の予測については更に研究継続を要すると考えられた。
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