研究概要 |
本研究ではヒト遺伝子多様性,特に炎症・線維化に関わるサイトカイン遺伝子のSNPを網羅的に解析することにより,肝発癌に関連したサイトカインSNPを同定し,発癌リスク個体差を明らかにすることで実際の医療に貢献することを目的としている. まず約1000例の慢性肝疾患患者白血球DNAサンプルを収集し,以下の検討を行った. UGT1A7遺伝子多型がC型肝炎患者において肝癌と密接に関係していることを見出した.すなわち,C型肝癌患者において,UGT1A7遺伝子の低活性アレルのhomoの患者および低活性アレルと高活性アレルのheteroの患者の割合が,高活性アレルのhomoの患者に比し,有意に多く,そのオッズ比はそれぞれ2.73倍,1.80倍であった. また,肝発癌に関与する遺伝子として,細胞の生死,炎症に関わる遺伝子171遺伝子,393 SNPsを選択し,C型肝炎患者188例(うち肝癌77例)において,肝癌との関連につき検討した.候補遺伝子,SNPを29遺伝子,31 SNPsに絞り込み,新たに選ばれたC型肝炎患者188例(うち肝癌93例)において,同様に検討した.最終的に有意に肝癌と関連している3遺伝子,3 SNPsを同定した. C型肝炎患者におけるMDM2 SNP309と肝癌との関連を検討した.C型肝炎患者435人(うち肝癌187例)のMDM2プロモーターSNP309のgenotypingを行った.肝癌患者187人におけるSNP309 G/G genotypeの比率(33%)は,肝癌のない患者248人での比率(23%)より有意に高かった(オッズ比2.28 95% CI 1.30-3.98).MDM2プロモーターのSNP309はC型肝炎患者における発癌と関連していた. これらは肝発癌メカニズムの解明に重要のみならず,肝発癌の超高危険群,超低危険群の設定を可能にすることが期待される.
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