研究課題
基盤研究(C)
大腸腫瘍において、間質から分泌される因子が腫瘍細胞のβ-カテニンの細胞内局在に影響するか否かを検討した。1.50例の大腸腫瘍検体からlaser capture microdissectionシステムを用いて、腫瘍の辺縁浸潤部と中心部からそれぞれ上皮と間質を切り出し、計4セットのRNAを回収した。続いてアレイ法により、腫瘍辺縁部の間質で発現が亢進している因子を網羅的に同定した。その結果、大腸腫瘍の辺縁浸潤部の間質でインターロイキン6(IL-6)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、growth arrest specific gene-6(Gas6)などの発現が亢進していた。2.大腸癌細胞株Caco-2,Lovoに対し大容量のIL-6を添加したが、β-カテニンの細胞内局在は変化しなかった。これら細胞株では、IL-6シグナルを伝達するSTAT3の活性が恒常的に亢進していた。そのためSTAT3の活性をdominant negative STAT3ベクターおよびJAK阻害剤AG490を用いて阻害すると、SW480細胞においてβ-カテニンは核から細胞質に移行した。Tcfレポーター活性もそれに伴い減弱し、SW480細胞の増殖は抑制されたため、STAT3経路がWNTシグナルに影響を与え、細胞動態を制御する可能性が示された。3.大腸癌間質におけるCOX-2の発現亢進機序を検討した。線維芽細胞を大腸癌細胞および良性腸上皮細胞と共培養する系を用いて、線維芽細胞周辺の局所的酸素濃度の低下が大腸癌間質におけるCOX-2発現に寄与する可能性を確認した。4.Gas6の及びその受容体Axlを発現している大腸癌細胞DLD-1に対しリコンビナントGas6を添加すると、PI3K/Akt経路が活性化した。その結果DLD-1の細胞増殖は亢進し、同時にアポトーシス抵抗性を示した。これらの実験を通じて、腫瘍の間質から産生される諸因子が、β-カテニンなどを介して大腸癌細胞の増殖に影響を及ぼすことが確認された。これらの知見は、大腸癌の浸潤・転移を抑制する治療法開発につながる可能性があると思われた。
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