研究概要 |
【目的】モチリンおよびモチリン受容体は,消化管運動機能に重要な役割を果たしている。申請者は,モチリンのPhe^1がモチリン受容体の第一,第二細胞外ループに結合すること,第二細胞外ループのうちのperimembranousなVal^<179>,Leu^<245>,Arg^<246>に結合することを明らかにしてきた。今回,photoaffinity labeling法およびreceptor mutagenesis法を用いての解析,またヒト消化管におけるモチリン受容体の発現様式の解析から,リガンド-受容体結合機構のさらなる解明を行った。【方法】(1)モチリンのPhe^5をphotolabileなBpa^5に置換したモチリンアゴニストを用いた受容体結合部位の同定,(2)モチリン受容体のN末端枝,第一,第三細胞外ループの変異受容体を用いた結合部位の同定,(3)ヒト消化管におけるモチリン受容体mRNA発現をreal time RT-PCR法で,蛋白発現を特異的ポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学法で解析した。【結果】(1)Bpa^5-モチリンは受容体の第三細胞外ループのPhe^<332>に結合した。(2)モチリン受容体のN末端枝のCys^<25>,Cys^<30>,第一細胞外ループのCys^<111>,第二細胞外ループのCys^<235>はモチリンおよびエリスロマイシン作用発現に必須であり,またperimembranousなGly^<36>,Pro^<103>,Leu^<109>,Phe^<332>はモチリン結合および作用発現に必須であった。(3)下部食道から遠位側大腸までの全消化管においてlong form typeのモチリン受容体が筋層の筋細胞および筋層間神経叢に強く発現していた。【結論】モチリン受容体のすべての細胞外ドメインはリガンド結合に必須であること,ヒト全消化管にモチリン受容体は発現しており,モチリン受容体アゴニストが消化管運動機能異常症の治療に応用できることを明らかにした。
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