研究概要 |
Caspase recruitment domain(CARD)-membrane-associated guanylate kinase 1(CARMA1、別名CARD11)は、CARD9、BCL10およびMALT1と共に,nuclear factor κB経路を介するリンパ球の活性化に重要な役割を果たしている。前年度までに、胃原発B細胞性リンパ腫65例(MALTリンパ腫43例、びまん性大細胞型Bリンパ腫6例、両者の併存16例)と慢性胃炎18例において、CARMA1,CARD9,BCL10およびAPI2-MALT1のmRNAレベルでの発現をRT-PCR法で検索した。今年度は、対象リンパ腫のうち30例において,CARMA1とBCL10蛋白の免疫組織染色を追加し、前年度の結果と併せて総合的に解析した。CARMA1およびCARD9 mRNAの発現はリンパ腫(55%および48%)において、胃炎(17%および0%)より高頻度であった。CARMA1とCARD9は、いずれもH.pylori陰性例、API2-MALT1キメラ分子陽性例、H.pylori除菌無効例で高頻度に発現し、Helicobacter pylori除菌治療に反応しないリンパ腫21例中18例(86%)は、両者のうち少なくとも一方が陽性であった。CARMA1 mRNAの陽性率は,MALTリンパ腫成分陽性例(50%)より,びまん性大細胞型Bリンパ腫(100%)で高かった。また、免疫染色によるCARMA1蛋白の過剰発現はリンパ腫の60%に認められ,CARMA1 mRNAの発現およびBCL10蛋白の核内発現と有意に相関していた。以上より、CARMA1およびCARD9の過剰発現が、胃B細胞性リンパ腫、特にH.pylori非依存性MALTリンパ腫の発生ないし進展に関連している可能性が強く示唆された。
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